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4.4 経年変化ディーゼル機関の性能把握

平成6年度から始まったSR224研究部会の分科会として、最終年度(平成8年度)に於いて、船用ディーゼル機関の経年による性能変化を系統的に把握する研究の為のフィージビリティースタディーとして、主として実験機関による基礎試験を通して、『経年船用ディーゼル機関の性能の把握』の研究を実施することになった。
このため、文献調査等を通して、ディ」セル機関の主要な経年劣化要素を選択し、その要素の劣化状態を模擬再現させ実験機関による諸性能の調査を行った。
文献調査の結果、長期間稼働するディーゼル機関が、どのような経年変化を起こすかについては、機関の種類、型式、使用環境、負荷条件、燃料・潤滑油の種類、配管系を含むプラントシステムの相違、メインテナンスの仕方等々、多くの因子に左右されるため、経年変化がディーゼル機関の性能にどのような影響を及ぼすかについて系統的に行われた研究はほとんど見当たらなかった。但し、機関各要素の作動中の物理現象をとり扱った研究はかなりみられた。

 

文献調査を踏まえて機関構成部品の主要経年変化要素を選択し、その要素の劣化状態を実験機関で模擬再現させ、経年変化状態把握及び現象評価手段を検証し以下の結果を得た。
機関性能低下を伴う経年変化について、経年変化度合いと性能低下の関係が把握できた。
機関性能低下を伴わないが単体機能の低下する経年変化について、燃料噴射系では噴射特性(噴射圧力、噴射期間)を計測する方法で噴孔拡大を検知できた。
リング・ライナ系ではリング間圧力を計測する方法でリング合い口拡大によるブローバイ増加を検知できた。ライナ温度の検出性能低下やブローバイ増加の検知に有効であることが確認され、センサの信頼性も高いことから経年変化把握手段として十分実用化が期待できる。
本試験では、燃料弁噴孔拡大試験のようにあらかじめ性能低下を予測して模擬したにもかかわらず、性能低下が再現できなかったケースもあり、今後の研究においては各要素の経年変化を模擬する方法をさらに検討する必要がある。また、リング間圧力計測のように現象は検知できるが実船適用に際してはセンサの信頼性・耐久性に課題があり、経年変化を把握するには機関装着に問題なく且つ信頼性の高い計測法の確立が必須である。
本試験は極端な経年変化を模擬したものであるが、実船に於いては運航条件や使用燃料等が異なるなかで各種の経年変化が複合的に遂行すると考えられ、今後、更にいくつかの経年機関単体要素の組み合わせ試験も実施することにより、複合状態での経年変化の程度が把握でき、メインテナンス及び部品交換を行う際の一定の指針になり得ると考えられる。

 

 

 

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